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夕方になると眠い!それは睡眠負債が原因かも?

本来、夕方は最も覚醒して頭もスッキリする時間帯です。
それなのに、眠気が襲ってくる原因はなんなのでしょう。

この記事では、人が眠くなるメカニズムや睡眠不足の危険性と対策について紹介します。

人はどうして眠くなるの?

どんな人でも必ず眠りは訪れます。そして、不眠症になれば精神に異常をきたし、うつ病になったり、死に至ることすらあります。

人が睡眠を必要とする理由は、いくつかあります。

睡眠欲求で眠くなる

人は日中、仕事で体を動かしたり、頭を働かせたりすることで体内に疲労物質がたまります。そうすると、自然に睡眠欲求がおこって眠くなります。

これは、ホメオスタシスという作用が強く影響しています。
ホメオスタシスというのは、体の健康を維持する機能のことで、環境の変化に適応するために体温や血圧、血糖値、体内の免疫機能、自律神経の調節など、人の意思に関係なく働く生命維持システムといえます。 このホメオスタシスの作用によって、自然と眠気がおこります。そして、睡眠中に体や脳内にたまった老廃物が取り除かれ、翌日には疲れがとれるという睡眠サイクルが生まれます。

たとえば、夜更かしして睡眠不足になった場合でも、ホメオスタシスの作用で、普段と同じ睡眠時間であっても、通常よりもずっと深い睡眠状態となって、自動的に体や脳の疲労を回復させるのです。

体内時計が眠りに誘う

朝起きてから、夜になって自然と眠気を催すようになるのは、体内時計が働いているからです。

体内時計は、睡眠リズムを作り出す自然のタイマーのような役割を担っています。
体内時計は、太陽の光を浴びることによって、毎日リセットされ、睡眠に必要な睡眠ホルモンである「メラトニン」を分泌します。そして、朝になるとメラトニンの分泌がストップして、覚醒します。 この体内時計は、睡眠欲求のように、体の疲れとは関係しません。前日にたっぷり寝ていても、翌日にも同じように睡眠をとることができるのは、体内時計が作用しているからです。 言い換えれば、寝だめができないということです。
睡眠負債を何とか返済しようと、休日に昼過ぎまで睡眠をとっておこうと思っても、これは返済にはなりません。むしろ睡眠リズムが乱れてしまって、夕方に眠くなるという症状が強まる可能性があります。

もうひとつの睡眠周期

人の睡眠リズムは、夜になるにしたがって徐々に眠くなると考えられてきました。しかし、ここにもうひとつの睡眠リズムがあることがわかっています。

それが12時間周期の睡眠リズムです。

よくお昼ご飯を食べ終わって、午後2時くらいの時間帯になると猛烈な眠気に襲われるという経験を持つ人もいるのではないでしょうか。ほとんどの人が「おなかが満腹になったから、眠くなった」と考えますが、実は、満腹とは全く関係がないところに原因があることが科学的な研究でわかっています。

人の体内時計では、24時間周期とは別に、12時間周期で眠気が訪れるという睡眠リズムがあります。それがちょうど午後2時~4時くらいまでの時間帯です。

「脳の中休み」と考えられます。

眠気の原因物質「オレキシン」の発見

満腹になると眠気が襲ってくる原因に、「オレキシン」という物質が関わっているという研究発表があります。

オレキシンは、食欲中枢の中にある物質です。 脊椎動物は空腹になると、捕食行動に移ります。捕食というのは、肉体的にも精神的にも緊張が最高潮になっていなければ、成功するものではありません。つまり、オレキシンは脳を活性化させる起爆剤となるのです。 しかし、いったん狩りが終わって、食事が無事終わればオレキシンは急激に減っていきます。

そのため、脳が覚醒状態からマッタリ状態へと移り、食後に眠気を催すというメカニズムが解明されつつあります。

夕方に眠くなるのは体からのSOS

夕方になると猛烈な眠気に襲われるという人は、睡眠リズムが狂ってしまっているのかもしれません。そのままにしておくと、睡眠負債がどんどん膨らんでいきます。

夕方まで続く眠気は、糖尿病の初期症状かも

食後に異常なほどの強い眠気が襲ってくる場合、あるいは、眠気の状態が夕方まで続く場合、もしかすると糖尿病の初期症状が表れているのかもしれません。

人は、食事をすると血糖値が上がり、眠気を覚えます。しかし、インスリンの働きによって、2~3時間後には元の状態に戻ります。インスリンが効かない状態、つまり糖尿病にかかっている場合は、なかなか血糖値が下がらなくて、高血糖の状態が続くため夕方まで眠いという症状が断続的に続きます。

心当たりがある人は、一度病院を受診して、自分の血糖値を調べてもらいましょう。糖尿病の初期は、生活習慣や食事療法で改善しますが、放置しておくと症状は悪化してしまいます。

睡眠時無呼吸症候群が原因の眠気

睡眠時無呼吸症候群が原因で、日中、重要な会議や運転中でもウトウトしてしまうことがあります。健康な人でも睡眠中は舌や気道周辺の筋肉は緩みますが、気道がふさがることはありません。

しかし、肥満ぎみの人は、喉の周辺にも脂肪がついて、気道が狭くなり、いびきが起こります。そして、仰向けで寝ることで舌根が落ち込んで気道をふさいでしまうことで睡眠時無呼吸症候群になります。
数秒から、長いと数十秒も窒息状態になるのですから、苦しくなって目が覚めます。それをひと晩中繰り返しているのですから、浅い睡眠しかとれずに、長時間眠っているはずなのに、日中眠くなります。

睡眠時無呼吸症候群の症状としては、朝になってもとれない疲労感、起きたときの口の渇き、頭痛がすることもあります。呼吸が止まるたびに覚醒してしまうので、睡眠障害を起こす人もいます。
睡眠時無呼吸症候群になりやすい人は、女性よりも男性で太っている、首が短くて脂肪が付いている、気道が狭い、下アゴが小さく後退している、扁桃腺肥大があるといった傾向があります。また、耳鼻咽喉科の病気が原因の場合もあります。

日中から夕方までの強い眠気が続いたり、家族から大きないびきを指摘されたりするようであれば、早めに病院を受診することをおすすめします。

夕方は睡眠禁止ゾーンなのに…

脳の中休みが過ぎると、脳は再び覚醒して、2回目の活動期に入ります。これを「睡眠禁止ゾーン」といいます。

体は疲れているはずなのに、仕事で残業したり、アフターファイブを楽しんだりするのは、脳の覚醒によって、がぜんやる気が出るからです。 ところが、夕方の睡眠禁止ゾーンにもかかわらず帰りの電車の中で眠ってしまったり、夕食前の時間帯に眠気が強くなってしまったりする場合、知らず知らずのうちに睡眠負債を抱え込んでいる可能性があります。

さらに、夕方の睡眠禁止ゾーンに睡眠をとってしまうことで、本来の睡眠時間帯に目が冴えてしまって、眠れなくなってしまう睡眠障害の引き金になってしまう可能性があります。すると、さらなる睡眠負債を抱えるという悪循環が生まれてしまいます。

睡眠負債が怖い理由とは

夕方になると眠くなって、仕事の効率が悪くなってしまうという日々が続いた場合、原因の大半は、睡眠負債です。
人は徹夜をすれば、寝不足だ、睡眠が足りないという自覚がもてるので、「今日はたっぷり寝よう」と対策を講じます。

しかし、毎日1、2時間というわずかな睡眠不足は、自覚症状がないままに、借金のように積み重なっていくのです。

生活の質を下げる

睡眠負債は、自覚症状がありません。睡眠負債がたまってくると、日中に猛烈な眠気が襲ってきて、仕事でのミスだけでなく、運転中の居眠りなど、命にかかわる重大な事故につながる危険性もあります。

朝起きても、スッキリと目覚めることができず、疲労感や倦怠(けんたい)感、集中力の低下、そして「今日も一日がんばるぞ」というモチベーションが上がらないのです。一日中眠気を抱えたままでは、生活の質を下げてしまいます。

認知症リスクを高める

人の脳は、睡眠をとることで覚醒時の10倍以上の老廃物や疲労物質を排出しています。

ある研究によると、睡眠負債が続くことで、脳の老廃物や疲労物質の排出がうまくいかずに、認知症の原因の多くを占めるアルツハイマー病の発症率を高めてしまうことがわかってきました。 睡眠負債は、このように若年性アルツハイマーや認知症の発症に深くかかわっています。

自分はしっかり眠れていると思っても、夕方から眠くなるという症状が表れたら、睡眠負債を疑って、睡眠の質の向上や生活習慣を見直してみましょう。

免疫システムの低下

人は、生命を維持するために免疫システムをもっています。外部からの細菌やウイルスが侵入すると、免疫システムが発動されて排除します。また、ガン細胞が増殖すれば、それを抑える働きをします。

しかし、睡眠不足が続いて睡眠負債がたまることで、免疫システムの機能が弱まったり、細胞を修復する成長ホルモンの分泌が少なくなってしまうため、身体が疲れやすくなり、すぐに風邪をひいたり、ガンの発症率を上げてしまう可能性があるのです。

仕事の効率低下

睡眠負債によって、運動能力や集中力が低下することがわかっています。これまでにも研究や実験が行われ、研究者から深刻な報告と警鐘がされてきました。

最近では、企業も睡眠負債による運転などの危険性や仕事の効率低下に注目しています。そして、徐々に導入されてきているのが働き方改革でも推進されている「勤務時間インターバル」と呼ばれる制度です。例えば、残業で勤務時間帯が伸びた場合、十分な睡眠・休息がとれるように、翌日の就業時間を繰り下げるという制度です。

このように、仕事の効率と睡眠の関係において、ビジネス面でもパフォーマンス向上を目指すという傾向になっています。

夕方眠くならないための対策と方法

夕方から眠くなるのを防ぐための対策として、真っ先にやらなくてはならないのは、睡眠不足を解消して、睡眠負債を返済することです。その具体的な方法をご紹介します。

昼食後の昼寝を習慣にする

昼食の後の昼休みに、15分ほどの昼寝は効果的です。しかし、昼寝の方法によっては、昼寝をしたために頭がボーっとして、眠気がとれない場合があります。これは、深く眠り過ぎることで睡眠慣性が起こってしまうからです。

スッキリする昼寝の方法は、深く睡眠をとり過ぎないということです。そのためには、横にならずに座って眠る習慣をつけましょう。 横になってしまうと、血圧と体温が下がってしまいます。体温はいったん下がると、起きたあともしばらく上がらないので、睡眠慣性が続いてしまいます。半分眠った状態で眠気がなかなかとれません。

座って眠る場合、突っ伏して寝る人もいるかと思いますが、呼吸を抑制してしまうことがあるので、ヘッドレストが付いた椅子を利用しましょう。ヘッドレストの椅子がない場合は、椅子の背を壁に付けて頭を寄りかからせて睡眠を取りましょう。

さらに昼寝の前にカフェイン入りのコーヒーなどを飲んでおくと、睡眠から覚醒へスムーズに切り替えることができるのでおすすめです。 カフェインを摂取すると眠れなくなると思うかもしれませんが、覚醒効果があらわれるのは、15分くらい経ってからです。ちょうど、適度な昼寝の時間に合わせることができます、

1時間早く寝て、1時間遅く起きる習慣を

睡眠負債を返済するためには、睡眠時間を増やすことです。

しかし、今までの生活習慣をガラリと変えることは難しいです。さらに、午前0時頃に寝ていた人が、10時に寝ようと思っても体が受け付けず、かえって睡眠負債が増えてしまったり、疲労が取れなかったりする可能性があります。

そんなときは、いつもよりも1時間早く寝て、1時間遅く起きる習慣に変えてみることをおすすめします。このような睡眠リズムにすることで、2時間の睡眠負債を返済できます。1時間がムリでしたら、30分でもいいので早く寝て、起床時間を遅くする生活をしばらく続けてみましょう。

睡眠負債は、長年の生活習慣によるものです。睡眠不足が徐々に積み重なってきたものですから、少しずつ返済していくという対策法しかないのです。

寝る前のスマホやパソコンには要注意

睡眠の質を上げるためには、寝る前にできるだけ強い光を浴びないことが大切です。

現代は、スマホやパソコンが生活の中で不可欠となっています。 人は、質の良い睡眠のためには「光」が重要な要素です。人は、光を浴びることで覚醒し、暗くなるにつれて睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されて眠気が呼び起こされます。

しかし、夜遅くまで明るすぎる環境にいると、メラトニンの分泌が抑制されてしまい、眠気が遠ざかってしまうのです。 スマホやパソコンのディスプレイからの光は、思っている以上に強烈なため、せっかく睡眠モードのなっている脳を覚醒モードにスイッチが切り替わってしまいます。 寝る前に、SNSをチェックしたり、オンラインゲームをしたりすると、せっかくの睡眠の波が遠ざかって、無理に寝ようとしても浅い眠りになり、質の悪い睡眠になってしまいます。

現代は、コンビニなどの照明はLEDを使っているところがほとんどです。LEDは従来の蛍光灯よりも強い波長の光を出しますから、脳を刺激してしまいます。 夜遅くにコンビニに立ち寄るときには、長時間の滞在は避けるようにしましょう。

睡眠負債の返済はコツコツと

夕方に眠くなるのは、睡眠負債による体からのSOSかもしれません。睡眠負債を貯め込むことはさまざまな悪影響を引き起こします。睡眠負債は生活を見直しながらコツコツと返していきましょう。

理想の睡眠時間は7~8時間といわれています。睡眠時間の確保が難しいのなら、睡眠の質を向上させるようにしましょう。

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