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食事のタイミングで病気を予防する時間栄養学とは

いつ食べるのかを考える、それが時間栄養学

体内時計とは、体内の細胞にある24時間を1日として時を刻むことができるシステムのことを言います。細胞内には「時計遺伝子」という遺伝子が働いており、複雑なネットワークを作ることで、24時間を刻むことができます。この時計遺伝子は体内のあらゆる臓器、細胞に存在し、機能しています。

この時計遺伝子が壊れたマウスを用いた研究から、体内時計は食事の消化、吸収、代謝などをコントロールしていることが分かってきました。時計遺伝子は食事が体内に入ってくる時間を予測し、食事の吸収や代謝をあらかじめ活発にしておくのです。また、時計遺伝子が壊れたマウスは、脂肪の多い食事をあげるとぶくぶくと太りやすく、さらに糖尿病や脂肪肝といった代謝性の病気になりやすいことが報告されています。

これらのことから、体内時計に合わせて「いつ食べるのか」をしっかりと考えることで、肥満の予防やダイエット効果が得られる可能性があります。こういった研究は日本でとても活発に行われており、日本発の新たな栄養学として「時間栄養学」という学問が誕生しています。筆者も、この時間栄養学研究にかれこれ10年ほど関わってきました。これまでの栄養学では、「何を、どれくらい」食べたらいいかが議論されてきましたが、時間栄養学ではさらに「いつ」という疑問に答えることを目指しています。

そこで今回は、夜食の影響や、ダイエット、アンチエイジングに効果的な食べる時間について紹介していきたいと思います。

1日1食生活、やるなら朝ごはん?それとも夕ごはん?

ここ数年ですが、「1日1食」と書かれた健康本が話題です。1日1食に制限することで、ダイエット効果や生活習慣病の予防効果が得られます。では、1日1食をするのであれば、朝ごはんと夕ごはん、どちらを選択するのが良いでしょうか?

私たちの研究室では、マウスに1日1食朝ご飯のみ、または夕ご飯のみの餌を与えて飼育する実験を行ってみました。餌は太りやすくするために脂肪分の多い餌を与えました。

その結果、夕食だけ食べていたマウスは、いつでもご飯を食べられるマウスと同じように太りました。それに対し、朝ご飯しか食べないマウスはほとんど太らないことが分かりました。その際に、1日で食べている量はどの実験群でも同じくらいでした。また、朝ご飯しか食べていないマウスは、起きている時間の消費カロリーが多く、さらに体内の脂質をよく燃やしていることが分かりました。

さらに、夕ごはんのみを食べていたマウスは、体内時計が夜型(時刻が遅れがち)になっていることも分かりました。朝ごはんのみを食べていたマウスは通常通りの体内時計でした。

よって結論は、1日1食をやるなら朝が効果的だと考えられます。

朝にたくさん、夕方に少なめな食生活が肥満予防にいい

寝る前のおやつや夜遅くのカップラーメンは、太るからやめた方がいいと昔からよく言われてきました。実はマウスやラットによる実験でも、「夜食は太る」ことが証明されています。

では1日2食ではどうでしょうか?「朝食2:夕食1」の割合で食べるマウスと、「朝食1:夕食2」で食べるマウスを比べてみました。その結果、「朝食1:夕食2」のマウスの方が太ることが分かりました。よって、夕食を少なめにする方がダイエットには効果的かもしれません。

特に、朝型に比較して夜型の人は、夕食を取る時間が遅くなりがちです。そのような生活スタイルの差を比較した研究では、肥満・糖尿病、メタボリックシンドローム、サルコペニア(筋肉量低下)の危険度が、とくに夜型で高まることが報告されています。また、朝食欠食(夜型に多い)が、肥満の要因であることは欧米・アジアのいずれの研究でも知られています。

夜食ばかり食べるマウスは記憶力が悪い

次に、食事時刻と記憶力の関係について紹介します。これも最近報告された論文からですが、「夜食ばかり食べていると、記憶力が悪くなる」という研究結果です。夜行性のマウスに、明るい時間(普段寝ている時間)にだけ餌を食べさせると、記憶の中枢である海馬という脳部位の神経活動が下がってしまい、記憶力が悪くなりました。また、夜食ばかり食べていたマウスは、睡眠リズムが乱れて、睡眠・覚醒が断片化していました。つまり、中途覚醒が増え、まとまった睡眠をしっかりと取れていなかったのです。

一方で、普通に生活していたマウスの記憶力は、昼と夜では異なります。しかし、それは覚える内容によっても変わります。この論文では、恐怖を覚えさせた場合は普段寝ている時間で覚えさせた方が記憶力が高かったのに対し、好奇心を伴う記憶は普段起きている時間帯に覚えさせた方が記憶が良かったと報告していました。

記憶もいろいろな種類があり記憶力が高い時間帯はいつなのか一概には言えません。ただ、夜間の睡眠時に記憶が整理されることは知られているので、徹夜しながら、夜食をつまみながら、の一夜漬け勉強はよくないかもしれません。

朝食を食べない子供は成績が悪い

小中学生における朝食欠食と成績の関係をご存知でしょうか?
朝ご飯を食べない子の成績は、毎朝ちゃんと食べる子と比較して良くないという全国調査の結果があります。これは、朝ご飯を食べない事による体内時計の夜型化が関係しているかもしれません。

また、朝ご飯を食べないことで脳が十分に活性化できず、午前中の勉強が身につかない可能性もあります。さらに、最近の研究では朝食欠食は、家庭の経済状況にも比例しているという結果も出ています。最近、学生の健康管理、生活習慣向上のために、大学の食堂が100円で朝食を提供しているところが増えています。時間栄養学の観点からも、100円朝食運動は大変意味のある取り組みであると思います。

腹8分目で生活習慣病予防

次に、米国サンディエゴにあるソーク研究所の研究を紹介します。

その研究では、高脂肪食を食べることができる時刻を1日8時間以内に固定してあげると、マウスは全く肥満にならなかったそうです。

そのマウスたちが1日に食べた高脂肪餌の総量は、肥満になったマウスと変わらず、同程度でした。その後、研究では1日12時間以内に餌を食べさせるという条件に変えても、同様の結果が得られたと報告しています。

つまり、毎日ステーキやハンバーガーを好きなだけ食べても、すべての食事を1日のうち8~12時間以内に食べるよう時間を制限することで、肥満にならないという可能性を実験動物で示したことになります。

どうしてこのマウスは太らなかったのでしょうか。

まず、食事は体内時計の時刻合わせをします(下記連載参照)。

高脂肪餌を自由に食べさせ太ったマウスは、体内時計のメリハリが弱まり、しっかりと時刻を刻んでいませんでした。しかし、今回のマウスは、食事時刻にメリハリがつくことで、体内時計のリセット効果が強くなり、肝臓や脂肪にある体内時計がよりメリハリよく強固に働くようになっていました。さらに、糖質、脂質の代謝が良くなり、エネルギー消費量も増加し、腸内環境も改善していることが分かりました。よって、このマウスは食べる時間を規則正しく制限しただけで、太らなくなったのです。

1日の食事時刻を12時間以内にすると太らない

このマウスで見られた食事時刻の固定による効果は、人でも報告されています。

まず、スマートフォン用アプリで、一般人の食事時刻を調べました(アメリカ人、しかしさまざまな人種を含む)。その結果、食事は、平均で1日14時間45分以内に行われていることが分かり、1日12時間以内に食事をしている人は全体の10%しかいませんでした。

そこで、BMI(体格指数)が25以上(つまり肥満)で、1日14時間以上の間に食事を取っている被験者を集め、食事時刻を1日10~12時間以内にしてもらい、それを3週間継続させました。その結果、体重が平均で3.27kg減少し、さらに朝の活力が向上し、睡眠の満足度も改善しました。

ただ、食事時刻の制限により、食事量自体も平均で20%も落ちていました。食事を1日12時間以内に抑えるためには、夜間の間食等を無くしたり、朝食を抜いたりして、結果的に食べる量も減るようです。よって、食べないから痩せたといわれたらそうかもしれません。似たようなダイエット法として、カロリー制限によるダイエット法(インターミッテントファスティング)などがありますが、これは断食を挟んだり1日1食にしたりするので少し異なると思います。

1日10~12時間以内の食事制限は、そういった方法よりも継続しやすく、米国では現在も研究が盛んに行われています。試してみてはいかがでしょうか?

食事時刻管理で糖尿病も予防できる

糖尿病患者に対しても、上述の食事時刻を固定する方法が効果的であることが報告されています。研究では、糖尿病予備群の男性(35-70歳、BMI 25-50 kg/m2、HbA1c 5.5%–6.4%)を募集し、ランダム化クロスオーバー試験(それぞれの試験を同じヒトが経験する)を行い、食事時刻の制限による改善効果を調べています。

コントロール群として、6時間おきに朝、昼、夕食を等量ずつ食べる群、制限群として3時間おきに3食食べる群を設定し、朝食は朝7時から8時半までに摂るようにしています。つまり、制限群では7時から13時までに1日分の食事を摂ることになり、その後約18時間の絶食期間が訪れることになります。この条件でそれぞれ5週間生活してもらいました。

効果を確かめるために、ここでは糖分が多く含むジュースを飲んでもらい、その後の血糖値の変化を調べています。結果、食事時刻を短く設定していた群で、ジュースを飲んで3時間後の血糖値が大きく減少していることが分かりました。また、血糖値を下げるホルモンであるインスリンも分泌量が減っていました。糖尿病は、糖分や脂肪分を慢性的に摂取することで、インスリンの効きや分泌が低下してしまう病気です。今回の結果は、少ないインスリンで血糖値がしっかりと下がったので、インスリンの効果が改善したことを意味します。

よって、食事時刻を1日の中で短め(12時間以内)に保つことは、肥満予防や糖尿病予防に繋がります。つまり、夜遅い食事や夕食後のおやつは、控える方がいいと考えられます。

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