【健康経営とは】正しく理解し正しく実践しよう
目次
3分で理解!「健康経営」とは?
ここ最近、耳にすることが多くなった「健康経営」。
しかし、実際に何をしたら、「健康経営」を実践している企業と言えるのか、何から始めたら良いのかわからない方が多いのではないでしょうか。
どのような背景で「健康経営」が推進されていて、どのようなステップを踏めばスローガン的な呼びかけで終わらず、自社に適した施策として落とし込めるのかを紹介します。
経済産業省が健康経営を推進する背景
まず、「健康経営」についてですが、
経済産業省が平成30年7月に出した、“健康経営の推進について”では、
従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること。
とされています。
つまり、会社が従業員の健康管理をするだけでは「健康経営」とは言えず、その施策が将来的に収益性を高めるという考えがあるということです。
会社が従業員の健康を保持して、増進すると聞くとどう感じるでしょうか。
「そんなこと、当たり前だ!」
「現状でも、健康保険組合などで守ってくれている」
ごもっともですが、その前提があった上でも、経済産業省が「健康経営」を推進していることには、もっと大きな理由があるような気がしませんか。
日本はまさに超高齢化社会を迎え、社会保障費の拡大が財政を圧迫しているという差し迫った課題があります。各企業が「健康経営」を推進することで、従業員一人ひとりが医療機関に行く頻度や生活習慣病の重症化を避けることができます。 今以上に高齢者が増えると、さらに医科診療費が膨らみ、財政をさらに圧迫します。生活習慣病は重症化すると他の病気を併発したり、治療に時間も費用もかかります。
そこで、経済産業省は、予防・健康管理への重点化を目指しています。
セルフメディケーションを推進し、国民自身が生活習慣を見直したり、早い段階で受診することで症状を早期発見できたりと医療費を削減することが目指すべき理想の姿です。 重症化してから、多大な費用をかけるのではなく、若いうちから少しづつ治療や早期の検診をすることで、医療費の全体的な削減をめざしています。
また、少子化の影響から労働生産人口が減少することから、経済活動の停滞が見込まれます。そのような状況において、新しく人を雇用するよりも、既存社員がパフォーマンスを発揮してくれるように企業努力した方が費用対効果が良いことが重要です。
平均寿命はよく取り上げられ、世界一と言われますが、健康寿命はあまり変化がありません。平均寿命と健康寿命の差(不健康寿命)は約10年あり、平均寿命に注目するのではなく、健康寿命を伸ばせるようにどうするかと議論した方が良さそうです。
では、その健康寿命を伸ばすためにはどうしたら良いのでしょうか。
健康は、一朝一夕で作り上げることができるものではありません。
健康経営導入の4ステップ
一般的には、20歳代前半で就職して定年退職までの約40年間、働くという前提で考えると、健康であることや病気にならないことに職場や仕事が大きく影響していることは容易に想像することができるでしょう。
「健康経営」は、多くの人が長い時間を過ごす会社において、従業員の健康を会社側から支援することと言えます。
では「健康経営」導入に向けて具体的にどのようなステップを踏めばいいのでしょうか。
会社として健康経営に取り組むことの宣言
しっかりと企業のトップや役員会で決議するなど、企業として「健康経営」に取り組んでいくんだという姿勢を明確に示すことが重要です。
「また思いつきで始まった、、、」
「流行りの◯◯で、半年もすれば消えているだろう、、、」
などと従業員に思われないようにすることが求められます。
組織体制の整備
一般的には、専門部署の新規設置や人事部などの既存部署の従業員を指名することなどが想定されます。
企業によっては、CHO(Chief Health Officer)を役員の中から指名するなど、企業としての本気度を示すことも重要となります。
実施
1)従業員の健康状態を把握する
「健康経営」を実施することによって、どのように変化したかを比較するために、実施前の状態を企業側として把握する必要があります。
しかし、「健康経営」を実施するために新たにデータを集める必要はありません。新しい施策に参加するハードルを下げるためにも、企業や健康保険組合がすでに保有しているレセプトや出退勤のデータで十分です。長時間労働と特定保健指導の必要性やかかっている医療費などを分析できます。
2)成果目標を立てる
そのデータから、自社の現状の課題を把握して、何を改善するかを決めます。定量的な成果目標を立てるようにしましょう。仮に成果目標を達成できなかった場合でも、施策の良し悪しを判断できます。企業内の資源だけでは測定が難しい場合は、外部の事業者を活用することも必要です。
3)施策を実施する
従業員がモチベーション高く、継続的に取り組めるような施策を企画しましょう。その背景や目的、達成できるとどうなるかなどを事前に共有することで、施策の納得感も出て、取り組みやすくなるでしょう。
4)健康保険組合との提携
施策の結果から、どのようなケアをするかなどのフォローを検討します。ただ、企業と健康保険組合では目的や優先順位が異なるため、事前にそれぞれの役割を整理しておきましょう。
5) 継続的に効果測定する枠組みを作る
施策の実施は一度きりではありません。
定期的に講じた施策の効果を測定することで、効果の波及を確認したり、その結果を受けて仮説検証する必要があります。 そもそも講じた施策自体に意味はあったのか、意味があったとするとどれくらいのスパンで次の施策を行うと効果があるのかなど、様々な仮説をたてて検証しましょう。
健康経営の導入費用ってコスト?それとも投資?
「健康経営」の導入費用は、コストではなく、未来への投資と言えます。
それでは、「健康経営」を理想的に推進できた場合のストーリーを見てみましょう。企業が健康経営を導入した場合に享受できるメリットがいくつかあります。
企業の基礎体力の向上
企業は社会に対して何かしらの課題解決をするために、事業を推進しています。
その課題は企業によって異なりますが、その事業を推進しているのは紛れもなく従業員です。例えAIが発達したとしても、AIを作り上げるのも操作するのも指示を出すのも従業員になります。
「健康経営」の施策の効果が出ると、従業員が健康になり、体調不良による欠勤やプレゼンティズムロス、すなわち出勤はしているが、何らかの原因で生産性が落ちている状態、が減ります。各従業員の普段のパフォーマンスが向上し、仮に「健康経営」実施前と同じ賃金であっても、より多くの成果を出す可能性が予測されます。
対外的なブランド力の向上
効果が出た「健康経営」の施策を対外的にPRすることで、企業は自社のイメージを良くし。ブランド力を向上させることができます。
従業員の健康管理に積極的な企業と聞いてネガティブなイメージを持つ人はいないと思います。実際に、就活生および就活生の親にアンケートを取ったところ、「従業員の健康や働き方への配慮」という項目が双方でもっとも選択されたというデータがあります。
組織自体の活性化
優秀な人材が集まり、企業としても継続的に従業員の健康管理に積極的であると、安定的に生産性が向上し、組織自体も活性化します。さらなるイノベーションや事業拡大が見込め、企業自体の業績向上や企業価値の向上に繋がります。
実際に例を挙げると、ジョンソンアンドジョンソンでは、健康投資1ドルに対するリターンが3ドルになるという調査結果を出しています。
グループ250社の約11万4,000人に健康教育プログラムを提供し、投資に対するリターンを試算しました。
医療スタッフなどの人件費、システム開発費、フィットネスルーム等の設備費に対して、生産性の向上や医療コストの削減、モチベーション向上、リクルート効果、イメージアップなど3倍の投資対効果があったとされています。
健康経営の注意点
従業員の健康増進を目的とした「健康経営」の推進が結果として、企業の業績向上に繋がり、良いスパイラルに入るという理想的なパターンを紹介させて頂きました。 ここまででは、良いこと尽くしのように見える「健康経営」ですが、注意点もございます。
注意点は「健康経営」に限った話ではありませんが、経営トップや会社としてコミットすることです。現時点において、明確な数値目標があるわけでもなく、可視化しづらい分野なので、つい形骸化しがちです。
ただ、どのような事業や技術発展が進んだとしても、事業を推進するのは従業員であることには代わりはないので、一過性のブームが過ぎ去ったとしても、「健康経営」を志向することは企業経営をする上で、優先すべき事項と言えます。 経営者や経営幹部は、従業員主体の事業推進という視点で「健康経営」を捉え、
実際に推進する組織のメンバーは、費用対効果を示すためにも、データヘルス計画でもあるように、従業員の健康を可視化するためのツールや施策を選択する必要があります。
健康経営が定着した日本はどうなるか?
ここまで健康経営の機運が高まった背景と、実際に企業に導入するためのステップについて考えてきましたが、ここからは実際に健康経営が日本に根付いた場合の現状の社会問題に与える影響を考えていきましょう。
世界に先駆け、超高齢か社会に突入した日本の役目
先進国はこぞって高齢化社会を迎えていますが、日本がその先頭を走っており、すでに超高齢社会と言えます。そのような中で、アメリカや中国、ドイツなどの諸外国は日本がどのような政策でどのような結果になるか、注目しています。 日本のケースが今後の先進国や世界の各国に影響し、手本とされるという意味合いで役割は非常に大きいと言えます。
日本再興戦略に描かれた日本
「健康経営」という言葉をよく聞いたり、ホワイト500を取得したりすることなどがニュースになることは本来目指すべき世界ではありません。 そもそも、企業と従業員は対等な関係であり、企業が従業員を雇用する以上、その健康を管理したり、維持向上することは当然の役目と言えます。
ただ、「健康経営」という言葉を改めて経済産業省が推進するということは、日本企業において、現状その当然の役目も果たせていないということの裏返しであると言えます。
「健康経営」を一過性のブームにするのではなく、企業経営のスタンダードに据えることで、従業員のエンゲージメントや生産性が向上し、Japan as No.1と呼ばれた日本を再興できるのではないでしょうか。
健康経営を普及させるために必要なこと
取り組み内容の適切なPR
経済産業省と東京証券取引所が選定する「健康経営銘柄」の好影響もあり、多くの企業で「健康経営」の取り組みが進んでいますが、必ずしも各社の取り組みが投資家や就職活動生、自社の従業員に伝わっていない可能性があります。
特に投資家との間では知りたい内容と企業の発信内容にギャップがあると思われます。そもそも「健康経営」に対する取り組みが適切に評価されづらいことは、投資家や企業の双方にとって機会損失となっていると言えます。
投資家が投資対象として評価するポイントは、健康経営の取り組みが経営理念から導かれる体系的なものであるというストーリーが理解できることです。
取り組み内容や成果などだけが発信され、なぜ自社ではこの取り組みを行うのかというそもそもの目的が明確に伝わっていないと、投資家へ適切なPRをすることはできません。
健康経営を可視化する指標の策定
「健康経営」は、生産人口が減少する日本において必要不可欠な施策であることはここまでで理解して頂けたと思います。
ただ、どのような結果になれば、その「健康経営」は成功と言えるのでしょうか。
健康経営への投資効果としてジョンソン&ジョンソンの事例も紹介しましたが、必ずしも「健康経営」の施策によって3倍の投資対効果が出たとは正直納得しづらいかもしれません。
必要なことは理解していますが、「健康経営」がさらなる普及や一般化するためには、測定可能な定量的な指標を設け、各企業が容易にその結果を得られることではないでしょうか。
健康経営の目指すべき本来の姿
ここまでは経済産業省が発表している「健康経営」について、概要を紹介してきました。
しかし、本来「健康経営」で取り組むことは、経済産業省が銘打って大々的にやることではなく、企業が従業員を雇用する上で、当たり前なことではないでしょうか。現状として、国が推進しているということは、その当たり前でさえ、できていないということの裏返しと言えます。
生活習慣病などのわかりやすい病気を予防することでも、「健康経営」の効果があったと言えますが、健康を病気か病気でないという二軸で捉えることはいかがでしょうか。
病気になってからでは遅い?プレゼンティズムロスとは?
健康か健康でないかと聞かれたら、健康だけど、いつものパフォーマンスが発揮できない日もありませんか?
そのような状態をプレゼンティズムロスと言います。 プレゼンティズムとは、生産性です。
具体的には、普通に定時に出社はしているけれども、なんだか眠いなとか、腰が痛いな、集中できないなという本来のパフォーマンスを発揮できていない状態をプレゼンティズムロスと言います。 そのプレゼンティズムロスに大きく影響しているのが、睡眠とメンタルヘルスです。その睡眠とメンタルヘルス自体も非常に相関があり、メンタルヘルスを患う人は不眠も併発している可能性が約90%というデータもあります。
では、健康を保つために必要な良い睡眠とはなんでしょうか?
プレゼンティズムロスと睡眠の関係
「寝れなくてもベッドに横たわっているだけで疲れは取れる」 「深い眠りが睡眠の質を左右する」 などなど睡眠に関する豆知識は巷に溢れています。そのような迷信に頼る人も多く、実際に不眠に悩む人は、約2,300万人おり、不眠症は国民病とも言えます。 一日24時間のうち、一般的には6〜8時間ほど寝ていて、ざっくり言うと1日の1/3は寝ています。その睡眠が日中の生産性やパフォーマンスに影響を与えていることは容易に想像できるのではないでしょうか。
また、実際に徹夜明けや極端に睡眠時間が短い次の日のパフォーマンスを思い出してみてください。 近年、スマホアプリやウェアラブルデバイスの普及などで、睡眠データは低負荷で取得することができるようになりました。健康への影響が大きいこと、比較的容易にデータが取得できることから、「健康経営」の第一歩として睡眠から着手することはいかがでしょうか。
個人も企業も共に健康に歩むために
健康経営を行うのは何も企業だけではありません。 あなたにとって一番の資産であり財産であるのはあなたの身体です。 企業の職場改善を受動的に待ち続けるだけではなく、自発的に自分のできる範疇でホワイト化を目指していきましょう。 そのためにはどうすればいいのでしょうか。
ブラックな人生ではなく、自分でできるホワイト化
みなさまの人生の主導権を握っているのは誰ですか?
それは現在お勤めの企業の経営者、もしくは上司ではなく、間違いなくあなた自身です。大事なプレゼンなど時には無理をすることも必要な場合もありますが、それが毎日続くわけではないと思います。 仕事も大事ですが、仕事だけの人生でもありません。趣味を満喫したいなど人によって人生の優先度合いは異なるはずです。
しかし、そのあなたらしい人生を謳歌するためにもっとも大事なことは、心身共に健康であることです。健康でないことはわかりやすいですが、健康を保つことは当たり前のようで、難しいのが現実です。 個人でできるホワイト化には限界があります。企業に提言して改善に向かわせることができれば御の字ですが、現実はそううまくはいきません。 そのため個人でできる最も有効なホワイト化の活動としてはやはりセルフメンテンナンスが挙げられるのではないでしょうか。
そこでまずは健康づくりの基礎と言える、睡眠から着手してみてはいかがでしょうか。
寝る時間を早くしようとするのではなく、起きる時間を一定にすることから始めてみてください。最初は辛いかもしれませんが、体内時計のリズムが整うと、自然と夜眠くなる時間も安定してきます。 休みだからといって寝溜めすることは身体によくないことです。 くれぐれも避けてくださいね。
自分の睡眠を変えるヒントはこちらから
健康経営への切り口に悩む企業担当者の方々へご提案
人工知能の発達などで、労働が機械にとって変わるなどのニュースがありますが、その人工知能をプログラミングするのも、指示を与えるのも従業員であり、なくなる仕事もあるかもしれませんが、その分新しくできる仕事もあるかと思います。
そのような現代においても、企業の業績や企業価値の向上を目指すためには従業員の健康管理は必須の企業活動と言えます。 「健康経営」の正解がまだわからない中で、健康に大きく影響を与えている睡眠から着手することはいかがでしょうか。
株式会社O:(オー)では、睡眠改善コーチングアプリを開発しており、個人の睡眠改善はもちろんのこと、メンタルヘルスに起因するネガティブな休退職をゼロにするというコンセプトで組織改善のサービスを提供しております。 上司から「健康経営」を企画しろと言われても何からすれば良いかわからないという担当者の方は、ぜひ一度弊社にご相談ください。
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