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【早稲田大学田原准教授執筆】自分は朝型?それとも夜型?自分に合った生活リズムを考えよう


朝型か夜型か、自分のクロノタイプを調べる方法

朝型、夜型などの生活スタイルを、私たちの研究分野では「クロノタイプ」と呼びます。
これは、人それぞれが持っている体内時計の個性です。

最近の研究では、クロノタイプは遺伝子によって決まっていることが分かってきました。
また、夜型の人はより体内時計が乱れやすいこと、その結果病気になりやすく、死亡率まで高くなってしまうことが分かってきました。

今回は、自身のクロノタイプを調べることで自分が朝型か夜型なのかを理解し、どう対処すべきかについて紹介します。

クロノタイプの計算式

まずは自分の生活スタイルがどのクロノタイプに当てはまるのか考えてみましょう。

クロノタイプを調べる方法はいくつかありますが、ここではドイツのティル・ロネンバーグ教授が考案したMCTQという質問紙を用いた方法を紹介します。
その質問紙では、下記のような質問をしています 。

  • 何時何分に寝床に入りますか?
  • 眠りにつくのに何分かかりますか?
  • 何時何分に目覚めますか?

 

実際には、仕事の時刻や食事調査なども含まれ、最終的に少し複雑な計算をしますが、今回は簡易的に説明します。

それでは、自分の「休日」の睡眠時刻を思い出して、その中間時刻(寝ている時間のちょうど真ん中の時刻)を計算してみて下さい。

例えば私は、23時に寝て6時に起きるので、2時半が中間時刻となります。
この結果を以下の表に当てはめて、クロノタイプを決めて下さい。
後述しますが、クロノタイプは年齢により異なるので、自身の年齢のところを見て下さい。
皆さんはどうでしょうか? 
この図から分かる通り、私(33歳、中間時刻 2時半)は朝型となります。

年齢朝型  
中間型  
夜型  
20代~4時4-5時5時~
30代~3:303:30-
4:30
4:30~
40-50代~33-44~
60代~~2:302:30-
3:30
3:30~

しっかりと計算した方は、こちらのサイトでアンケートに答えることで算出できます。
時間のある方はぜひこちらも試してみて下さい。

クロノタイプは遺伝子で決まっている

遺伝子解析技術が向上し、ヒトの遺伝子検査が安価で行える時代が到来しているのはご存知でしょうか? 
米国のベンチャー企業「23andMe」では、1人99ドルから遺伝子解析をするサービスを提供しています。日本でもいくつかのベンチャー企業が、1人1万円程度から解析してくれるサービスを提供しています。また、ヨーロッパのUK Biobankではさまざまな疾患患者を含む50万人分もの遺伝子情報を解析、蓄積し、研究者向けに公開しています。

現在、一般向けに行われている遺伝子検査で分かることは、それぞれ個人の持つ遺伝子の特性(変異、SNPと呼ぶ)です。

遺伝子はA、T、G、Cという四つの記号で表される物質(ヌクレオチド)がつながって配列を作り、暗号化されていますが、その配列=暗号の一部が個々人で変化していることがよくあります。その暗号の変化=配列の違いを読み取ることで、あなたは肥満になりやすい、またはある病気になるリスクが高い、といった情報が得られます。これは、実際に病気にかかった人の遺伝子を調べ、どこに変化があるかを調べた膨大なデータベースが既に蓄積されているからです。

そして昨年(2016年)、23andMeやUK Biobankにより蓄積された膨大な個人の遺伝子情報を解析することで、朝型の人と夜型の人の遺伝子の違いについて調べた研究結果が報告されました。米欧それぞれのデータベースから得られた結果は多少異なるものの、朝型の人に特有の遺伝子変化として、二つの遺伝子(Per2、Rgs16)が両方のデータベースから検出されました。この二つの遺伝子は体内時計にかかわる非常に重要な遺伝子として知られていたものです。
つまり、これらの時計遺伝子に、特徴的な暗号の変化が見られた場合、その人は朝型になりやすいと考えられるわけです。

ただし、この二つの研究での朝型・夜型の判定方法は、遺伝子検査と共に行ったアンケートで、「あなたは朝型ですか?夜型ですか?」と聞いたのみであり、上述のような質問紙を使ってきっちりと判定したものではありません。それでも、二つのデータベースから同様の結果が導き出されたわけですから、信頼できる結果だと思います。

夜型はどうして辛いのか

では、朝型と夜型だったら、どちらの方がいいのでしょうか?
最近では朝活が流行っています。
仕事のできる人は朝型で、特に朝を有効活用している、なんてことが言われますが本当なのでしょうか?
科学的に言えることは、現代の社会生活は夜型の人にとって辛い環境にある、ということです。

遅れやすい体内時計

中間型と夜型の人を集めて、その人たちの体内時計の進み具合、遅れ具合を調べた研究があります(国立精神神経センターの肥田晶子先生、三島和夫先生による研究)。中間型と夜型の被検者17人の皮膚から、線維芽細胞という細胞を取り出し、培養しながら細胞の中で働く時計遺伝子の様子を観察しました。その結果、皮膚細胞の体内時計の進み具合、遅れ具合と、MCTQ質問紙で調べた中間型・夜型の結果が相関しました。
つまり、夜型の人の細胞は、中間型の人に比べ、体内時計の進み方が遅いことが分かったのです。

人の体内時計は24時間より少し長く、毎日その分を早めて24時間に合わせる必要があります。この研究の結果から、夜型の人は、他の人よりもさらに遅れやすい体内時計を持っており、油断するとすぐに夜型になってしまう体質だということが分かりました。また、休日に夜更かし・朝寝坊しがちな方は、夜型かつ遅い体内時計の持ち主なのだろうと言うことができます。

週末プチ時差ボケとは

夜型の方が健康への影響が大きいのは、睡眠不足が大きな要因になっていると考えられています。どうして夜型の人が睡眠不足になりやすいかというと、「社会的時差ボケ」という現象が起きやすいからです。今回、休日の睡眠時刻を元に皆さんのクロノタイプを判断する方法をご紹介したのは、休日の睡眠時間の方が個人の体内時計をより反映した結果であるためです。実際、ほとんどの人は、平日は会社や学校といった社会的な理由により、早起きを強いられています。ティル・ロネンバーグ教授の調査結果でも、夜型の人ほど、平日と休日の睡眠時間に差が生まれていました。

よって、夜型の人ほど平日に無理に早起きし、だけれども夜は遅くまで起きてしまう傾向にあり、結果的に睡眠不足になるわけです。これを平日の睡眠負債の蓄積と表現し、夜型の方は休日にたくさん寝ることで睡眠負債を解消するのです。

社会的時差ボケがもたらす健康被害

では、クロノタイプの違いによる健康への影響はあるのでしょうか?
いくつかの報告から、夜型はBMIが高い傾向にあり、さらに摂食障害、アルコール依存症への罹患リスクが高いことが分かっています。特に食に関して言えば、夜型の人は朝食を食べない傾向があり、さらに“むちゃ食い障害”になるリスクも高いことが報告されています。むちゃ食い障害は一種の過食性障害であるので、夜型の人は過食傾向になりやすいのでしょう。また、食パターンが夜型化することは、体内時計の夜型を促進し、また肥満も促進します。よって、一度夜型生活を始めてしまうと、そこから抜け出すのは困難になるでしょう。

また、夜型の人は、躁うつ病になりやすいことも報告されており、逆に躁うつ病患者を調べてみても夜型の割合が高く、メラトニンやコルチゾールといったホルモンの日内変動にも遅れが見られます。さらに、イギリスの研究で、夜型の人を6.5年間追跡調査した結果では、心疾患による死亡率が、超朝型の人に比べ、超夜型の人で高いことが分かりました。
よって、夜型の人は様々な病気のリスクが高く、その上で死亡率も増加してしまうようです。

20代はみんな夜型化

ティル・ロネンバーグ教授は、10代から80代までの男女5万5000人にこの質問紙を用いてアンケート調査を行った結果を発表しています。その結果から分かったことは、年齢によって朝型、夜型が変化しているということでした。つまり、10代では平均の中間時刻が3.5時だったのが、20~30代では約5時にまで後退しています。つまり青年期は成長と共に夜型化していく、ということです。しかし、その年代をピークに、その後段々早まっていき、60~80代では約3時と朝型化しています。

この結果から明らかなように、高齢者は早寝、早起きであり、やはり朝型が多いのです。また、男性の方がより20~30代の夜型化が顕著でした。この男女差が生まれた理由はまだよく分かっていませんが、男性は社会的な影響(仕事など)も大きいのかもしれません。

会社も学校もフレックス制がいい

朝型、夜型のタイプ別に、学校の成績(小学生~大学生)との相関を調べた研究を計31報まとめて解析(メタ解析)した結果が公開されていますので、ここで紹介します。

まず全体的な結論として、夜型の子供は、小・中学生、高校生、大学生のどの年代でも成績が悪い、という結果が出ました。その差は大学よりも小学生~高校生においてより顕著でした。大学生は小中高生に比べ、自立しており、時間割りも自分で決めることができ、さらに授業への出席も厳しくないので、夜型の学生も適応しやすいからではないかと考えられます。それに対し、小中高生は授業開始も早く、夜型の子供がより社会的時差ボケを経験しやすく、それに伴う睡眠不足や睡眠の質の低下、午前中の授業の不適応などが、成績低下につながっているのではないかと推測できます。

さらに最近の研究では、学校の始業時間を1時間遅らせた結果、生徒全体の睡眠時間が増え、その結果成績や幸福度が上がったという結果が、シアトルや香港の学校から報告されました。つまり、夜型にとって朝の始業時刻は早過ぎであるようです。よって、朝型の人は朝早くから仕事開始、夜型の人は遅めに開始できるようなフレックス制度は、クロノタイプを考慮した働き方として適しているのです。


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